子宮がんには「頚がん」と「体がん」の2種類があります。子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部とよばれる部分から発生します。子宮体がんは子宮内膜がんとも呼ばれ、胎児を育てる子宮の内側にある、子宮内膜から発生するがんです。
子宮頚がん
子宮体がん
子宮がんにかかる人は、全体として年間約25,200例で、このうち子宮頸がんが約10,900例、子宮体がんが約13,600例、どの部位か情報がない子宮がんが約700例となっています(地域がん登録全国推計値2012年上皮内がんを除く)。また、子宮がんの死亡数は、全体として年間約6,400人で、このうち子宮頸がんが約2,900人、子宮体がんが約2,200人、どの部位か情報がない子宮がんが約1,300人となっています(人口動態統計2014年)。
子宮の入り口付近に発生することが多いので、普通の婦人科の診察で観察や検査がしやすいため、発見されやすいがんです。また、早期に発見すれば比較的治療しやすく予後のよいがんですが、進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要といえます。
子宮頸がんは、粘膜表面にとどまる上皮内がんと、粘膜より深く広がる浸潤がんからなります。上皮内がんを含めた子宮頸がんの発生率は、50歳以上の中高年層ではこの20年間で順調に減ってきていますが、逆に20歳から29歳では急激に増加しています。 これは、子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関与しており、高齢になるほど多くなるほかのがんと違って、性活動が活発な若い年代で感染の機会がふえているためと考えられます。
細胞診では、子宮頸部の表面から綿棒などでこすりとった細胞を顕微鏡で調べます。受診された方の約1%に精密検査が必要となり、精密検査が必要な受診者の中でがんが発見されるのは、約10%弱と非常に高率です。これらのがんの60%以上は、粘膜の表面のごく一部だけにとどまる上皮内がんなどごく早期のがんで、その大半は子宮を温存した治療が可能です。 子宮頸がん検診は非常に有効で、進行がんを防ぎ死亡を減らす効果が証明されています。多くの先進国ではほぼ例外なく、子宮頸部細胞診による検診が行われています。欧米での受診率は高く、例えばアメリカでは、18歳以上の女性の80%以上が、過去3年以内に1回以上検診を受けています(2002年)。一方、日本では過去1年以内に検診を受けた女性は、25%程度にとどまっています。
細胞診で異常があった場合は、コルポスコープという拡大鏡で、子宮頸部の粘膜表面を拡大して細かい部分を観察し、異常が疑われる部位に、狙いを定めて小さな組織を切り取り、標本をつくって顕微鏡で観察して診断(組織診)します。この検査では、痛みを感じたり、出血したりする場合があります。
コルポスコープ
子宮膣部拡大(酢酸処理後)
子宮体がんは、エストロゲンという女性ホルモンの刺激が長期間続くことが原因で発生する場合と、エストロゲンとは関係ない原因で発生する場合がありますが、約8割はエストロゲンの長期的な刺激と関連していると考えられています。エストロゲンが関係していると考えられる子宮体がんに関しては、肥満、閉経が遅い、出産経験がないなどの場合に、発症のリスクが高くなることがわかっています。また、乳がんの治療でタモキシフェンという薬剤を投与されていたり、更年期障害の治療でエストロゲンの補充療法を受けていたりする場合も、子宮体がんのリスクが高くなるとされています。 わが国で子宮体がんと診断される人は、40歳代から多くなり、50歳から60歳代の閉経前後で最も多くなっています。近年は食生活の欧米化などに伴い増加しているといわれています。
子宮体がんは、病状が進行していない早期の段階で出血を来すことが多く、不正性器出血での発見が約90%といわれています。少量でも出血があれば、すぐに医療機関を受診することで早期発見が可能です。下着に染みが付くことや下腹部痛も出血に次ぐ症状です。
子宮腔から細胞を採取してがんの有無を調べる子宮内膜細胞診を行ないます。当院では小さな穴のあいた細いチューブを入れて子宮内膜の細胞を吸引する方法と、専用の器具で細胞をこすりとる方法を行っています。検査は、多少の痛みを伴います。また、検査後2~3日の間少量の出血をみることもありますが、通常は心配ありません。妊娠されたことがない方や閉経後数年経っている方は、子宮の入り口が狭いために、検査がしにくいこともあり、あらかじめ、子宮の入り口を器具を用いて拡張してから細胞診を行うこともあります。
名古屋市内にお住まいの20歳以上の女性の方で、お勤め先等で子宮がん検診を受ける機会がない方は、自己負担金500円で子宮がん検診を行うことができます。
体がん検診のみの受診はできませんのでご注意ください。名古屋市の子宮がん検診を受診できるのは2年度に1回です。平成25年度(平成25年4月1日から平成26年3月31日)に受診された方は、平成26年度は受診することはできません。ただし、無料クーポン券を交付された方は、この限りではありません。70歳以上の方、生活保護世帯の方など名古屋市の規定する自己負担金免除該当者の方は、自己負担金が「無料」となります。
名古屋市に住民登録のある方で、今年度20、25、30、35、40歳になられる女性の方は子宮頸がん検診を無料で受診していただけます。 対象の方には、名古屋市から、子宮頸がん検診・乳がん検診・大腸がん検診の無料クーポン券と検診手帳が配布されます。(6月頃の予定) 問診の結果、医師が必要とした場合にはご本人の同意を得た上で子宮体がん検診(子宮内膜細胞診)を実施することがありますが、その場合には500円の自己負担金をお支払いいただきます。
ブライダルチェックは、ご結婚を前に、ご自身とパートナーの身体のチェック、特に「妊娠・出産に支障がないか」ということについて調べる検査です。ご希望をお聞きし、どの検査を行うかを決めます。
妊娠中に感染することで、赤ちゃんに奇形、発育障害などの異常を起こす可能性がある感染症です。以前に感染したことがあるか、血液検査で抗体を調べます。風疹、麻疹などワクチン接種ができるものは、抗体がなければ、妊娠前に接種しておくことが望ましいです。
性行為により感染する病気のため、感染していた場合に、パートナーも検査、治療が必要です。
月経痛、性交痛、排便痛の原因になる子宮内膜症がないか、内診、超音波検査を行います。子宮内膜症は進行が進むと、子宮、卵巣、卵管、腸との間に癒着をおこし、妊娠しにくくなる原因となります。また、卵巣腫瘍、子宮筋腫は、特に症状がない場合もあり、超音波検査で初めて診断がつくことがあります。
子宮の入り口(子宮頚部)にできる子宮頸がんは、初期の段階では無症状のことが多く、1~2年ごとの細胞診が望ましいです。
月経はきているが、排卵しているか心配な方や、女性に多い甲状腺疾患については、血液検査でホルモンチェックをします。卵巣で作られるエストロゲン、プロゲステロン、下垂体で作られるLH、FSH、プロラクチン、甲状腺機能検査などを調べます。
卵子は、精子と違い、生まれる前に作られたものが残っているだけで、新たに作られてはおらず、年齢とともにその数は減少していきます。卵巣中の前胞状卵胞という小さい卵胞から分泌されるホルモンを調べることで、残存するおおよその卵子の数を予測し、現在の卵巣予備能を評価します。
女性は月経のため、自覚症状がなくても、貧血や鉄、葉酸不足などが起きていることがあります。肝機能、腎機能とあわせて血液検査でチェックします。
女性同様の感染症チェックを行います。このうち、特に男性では、精巣に感染を起こすと、精子をつくる機能に問題がおきる可能性があるムンプス(流行性耳下腺炎:おたふくかぜ)の抗体を調べることは重要で、もし抗体がなければ、ワクチンを接種することが望ましいです。また、風疹抗体が16倍未満だった場合、名古屋市に住民票がある方は、ワクチンが無料で接種できます。
精子の数、運動率、奇形率などを調べます。2-5日間の禁欲をして頂き、専用の容器に採取後、2-3時間以内に検査を行います。院内で採取することもできます。精子濃度が1mlあたり1500万以上、運動率40%以上という数値に満たない場合に、男性側に不妊の原因があるかもしれないため、より詳しい診察を行います。
精巣(睾丸)の大きさを触診で確認します。また、精巣の静脈に血流が逆流して拡張し、瘤のようになる静脈瘤が先天的あるいは後天的にできている方は、精子の状態が悪化して不妊の一つの原因となることがわかっています。静脈瘤の手術を受けて血流障害を改善することで、妊娠率の向上が期待できます。
精子の数や運動率に問題を起こしたり、勃起障害(ED)、射精障害の原因に、男性ホルモンなどの内分泌的異常や糖尿病などの内科的疾患があります。内分泌検査として、精巣で作られるテストステロン、下垂体で作られるLH、FSH、プロラクチンなどを調べます。また、糖尿病や肝機能、脂質代謝異常、亜鉛、葉酸不足などのミネラル・ビタミンの異常がないかを調べます。
(費用はすべて別途消費税がかかります)
健康で充実した毎日を過ごせるように
女性の方に対してのホームドクターとして、質の高い産婦人科診療を行ってまいります。