子宮内膜症

子宮内膜症とは

子宮内膜症は、子宮内膜またはそれに類似する組織が何らかの原因で、本来あるべき子宮の内腔以外の場所に発生・増殖する病気です。この組織は正常な子宮内膜と同様に女性ホルモンの影響で周期的に増殖・出血を繰り返し、血液が溜まる事で炎症や周りの組織との癒着をおこし、月経痛や性交痛、排便痛などさまざまな痛みをもたらします。良性の病気ですが、放っておくと症状の悪化や不妊症の原因になることもあるので、早期に発見し、治療を始めることが大切です。治療法には病変部を取り去る手術療法と消炎鎮痛薬、漢方薬、ホルモン療法といった薬物療法があり、病状の程度や患者さんの年齢、赤ちゃんを望んでみえるか、などを考慮し方針を決めます。子宮内膜症は再発例も多く、また治療に伴う副作用もあるので、医師との綿密な話し合いの上、オーダーメイドの治療をしていくことが大切です。

チェックリスト

  • 以前に比べて、月経痛がひどくなった。
  • 排便する時や性交の時、お腹の奥に痛みがはしる。
  • 月経周期に関係なく、下腹部や腰に痛みがある。
  • 月経血の量が多く、めまいやだるさなどの症状がある。
  • 赤ちゃんがなかなかできない。

子宮内膜症の診断方法

内診で痛みの部位、程度を調べたり、超音波検査やMRI検査で子宮、卵巣の大きさ・性状を確認したり、腹腔鏡で直接お腹の中をのぞくことで診断します。
また血液検査で、腫瘍マーカーの一種であるCA125の値を調べることも診断方法の一つです。

子宮内膜症の発生部位

子宮内膜症の発生部位

子宮内膜症の腹膜病変

子宮内膜症の腹膜病変

子宮内膜症卵巣チョコレート嚢腫
子宮内膜症卵巣チョコレート嚢腫

子宮内膜症卵巣チョコレート嚢腫

チョコレート嚢胞の画像診断

チョコレート嚢胞の画像診断

子宮内膜症の治療法

薬物療法
対症療法 鎮痛薬・漢方薬
内分泌療法

妊娠した状態に似たホルモン環境にする方法(偽妊娠治療といいます)と、偽閉経治療といって閉経の状態と似た状態にする方法があります。

  • 偽妊娠療法
    1)低用量ピル/EP配合薬療法
    排卵と子宮内膜の増殖を抑え、月経痛などの症状を改善させます。
    2)ジェノゲスト療法
    黄体ホルモンの働きにより、女性ホルモンの分泌を抑え、病巣に作用して諸症状を改善させます。
  • 偽閉経療法
    1)GnRHa療法
    閉経時に近いホルモン状態にして、病巣を縮小し、諸症状を改善させます。
    2)ダナゾール療法
    男性ホルモンの働きにより、女性ホルモンの分泌を抑え、直接病巣に作用して諸症状を改善させます。
手術療法

主に腹腔鏡を用いた手術が行われます。

  • 保存手術・・・病巣部のみを切除し、卵巣、子宮の正常部位は残します。
  • 根治手術・・・両側の卵巣を摘出し、場合により子宮も摘出します。

当院では、内膜症に対する手術は行っていないので、患者さんのご意向を確認し、手術をする病院にご紹介させて頂きます。

子宮腺筋症とは

子宮内膜症の一つの状態で、本来子宮内腔にだけあるべき子宮内膜組織が、子宮筋層(子宮の壁に相当する部分です)内で発育する病気です。子宮腺筋症では、子宮筋層内にある子宮内膜組織が月経周期に応じて出血をおこすために、その部分に出血に対する反応が起こり、子宮壁は次第に硬く大きくなります。子宮筋腫が筋腫の部分と正常の筋層の部分がはっきり区別できるのに対し、子宮腺筋症では子宮筋層内にばらまかれたように病変がみられるのが特徴です。閉経すると月経がなくなりますから子宮は小さくなり、子宮腺筋症はやがて治癒します。

子宮腺筋症の診断
子宮腺筋症の診断

症状のほか、内診や超音波検査、MRIなどの画像診断や腫瘍マーカーの一種であるCA125の値などから診断します。確定診断は切除した検体の病理組織診断によりますが、病理組織診断以外で、診断上で最も有力なのはMRIです。子宮腺筋症と子宮筋腫とは症状が似ており、ともに子宮が大きくなる病気です。子宮を残す手術を予定する場合は両者の区別が重要です。多くの場合、MRIで両者の区別は可能です。

子宮腺筋症の治療法

手術で子宮を摘出すること以外に、子宮腺筋症の確実な治療法はないため、症状がない場合や軽度の場合は、経過観察することになります。妊娠すると子宮腺筋症はある程度軽快するといわれています。将来、妊娠を希望される方は、早めに妊娠することを考えて頂くこともお勧めします。

対症療法としては、月経困難症や下腹痛に対し鎮痛剤を服用したり、過多月経による貧血に対し鉄剤を服用します。

内分泌療法としては、閉経前や体外受精治療前に、月経を止めて一時的な症状改善を図ることを目的とし、GnRHアゴニストを使用する偽閉経療法が行われることがあります。継続的に治療を行う必要がある場合は、低用量ピルやジェノゲスト(黄体ホルモン)を服用し、月経困難症や過多月経の改善を図ります。また、LNG-IUSという黄体ホルモンが持続的に放出される器具を子宮内に挿入する治療(商品名ミレーナ)も効果が確認されています。

手術療法では、前述したとおり、将来の妊娠の予定がなく、月経困難症、過多月経、下腹痛などがひどい場合は、子宮腺筋症を完全に治すことを目的とし、腹式子宮全摘術、腟式子宮全摘術や子宮鏡補助下腟式子宮全摘術を行います。その場合、卵巣を切除する必要はありません。一方、妊娠のご希望があり、MRIなどで腺筋症の病巣が子宮の一部にある程度限局していると考えられる場合は、その部分だけを切除することがあります。この場合、病巣の一部が残りますが、ひどい症状を改善できることがあります。患者さんのご意向を確認し、手術をする病院にご紹介させて頂きます。

健康で充実した毎日を過ごせるように

女性の方に対してのホームドクターとして、質の高い産婦人科診療を行ってまいります。

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