精索静脈瘤は男性不妊症を引き起こす代表的な疾患で、陰嚢内の静脈血管が瘤(こぶ)状に腫れている状態をいいます。特に立っている時や、お腹に力が入った時などは、より血液の流れが悪くなるので、血液のうっ滞が強く起こります。
一般に陰嚢内はお腹の中より3度程度温度が低く、精巣はその低い温度環境の中で精子を作ります。逆に言えば、精巣が温められると精子を作る力が低下するということであり、静脈瘤があると、拡張した静脈内にある体温と同じ36度の血液により、精巣が温められることで、精子形成障害が生じると考えられています。また拡張した血管より精子にダメージを与える物質が放出されることや、精巣が低酸素環境になることも精液所見の悪化を引き起こすと考えられています。
精索静脈瘤は軽いものを含めると全成人男性の15%程度に見られます。これらの男性全員において、精液所見が悪化するわけではありませんが、陰嚢に血管の瘤が数珠(じゅず)状に浮き出ている方は受診をおすすめします。